就労ビザと法務大臣の許可

在留資格の意味と種類、取得するための手続について、国際業務専門の行政書士が解説していきます。

一般的に「ビザ(就労ビザ)」とも呼ばれている在留資格は、外国人が日本で就労するために必ず取得しなくてはいけない資格です。

しかし、在留資格は29もの種類がある上に、外国人の状況によって異なる手続をしなくてはいけないなど、雇用主にとっては非常に理解しにくいものとなっています。

「外国人を雇用するにはどの就労ビザが必要なのか」、「どのような手続をするべきなのか」を理解して、スムーズに外国人雇用を始めましょう。

在留資格とは

在留資格とは、外国人が日本で活動するために必要な出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)上の資格のことです。

2024年11月現在、入管法には29種類の在留資格が定められており、その種類ごとに認められている活動が異なります。

2024年11月現在、入管法には29種類の在留資格が定められており その種類ごとに認められている活動が異なります。

外国人は、取得した在留資格で認められている活動のみ行うことができ、29種類以外の活動をすることや、取得した在留資格では認められていない活動をすることはできません。

外国人が日本にいられるのは在留期間内のみ

在留期間とは、外国人が日本に滞在できる期間のことです。

外国人は在留期間を経過して日本に滞在することはできませんが、在留期間更新許可申請をすることで滞在期間を更新(延長)することが可能です。

外国人は在留期間の更新(延長)が許可される限り、日本で活動することができます。
在留資格「技能実習」や在留資格「特定技能」などの場合、通算在留年数に上限があります。

在留資格とビザ(就労ビザ)は違うもの

ビザ(査証)の見本

在留資格は一般的に「ビザ」や「就労ビザ」と呼ばれていますが、この2つは本来異なるものです。

本来の「ビザ(visa)」の正しい日本語訳は「査証」であり、「在留資格」ではありません。

・査証(日本に入国するのに必要なもの)

本来の意味での「ビザ」。

現地の日本大使館・領事館などが日本に入国しようとする外国人を審査し、入国に問題がない場合にパスポートに貼り付けるシールのことです。

審査は海外で行われ、外国人が日本に入国する際に必要となります。

・在留資格(日本に滞在するのに必要なもの)

一般的な意味での「ビザ」。

日本の出入国在留管理局が日本に滞在しようとする外国人を審査し、滞在することに問題がない場合に付与する資格のこと。

審査は日本で行われ、外国人が日本に滞在する際に必要となります。

当サイトでの表記

在留資格と「ビザ(就労ビザ)」は本来異なるものです。しかし、当サイトでは多くの方が理解できるように、在留資格を「ビザ」や「就労ビザ」と表記することがあります。査証に関しましては、そのまま「査証」と表記させていただきます。

在留資格の種類一覧と対応する業務

2024年11月現在、入管法には29種類の在留資格が定められており、外国人は取得した在留資格で認められている活動(業務)のみを行うことができます。

2024年11月現在、入管法には29種類の在留資格が定められており、外国人は取得した在留資格で認められている活動(業務)のみを行うことができます。

具体的にどのような活動(業務)が認められているのか、在留資格の4つの分類と一緒に見ていきましょう。

在留資格の4つの分類

就労という観点から在留資格を分類すると、以下の4つに分けることができます。外国人を雇用するには、この4つの分類を理解する必要があります。

分類 就労の可否
制限付きで就労が認められる在留資格
(23種類)
認められている活動の範囲内であれば就労を行うことができます。
制限なく就労が認められる在留資格
(4種類)
適法なものであれば、どのような就労でも行うことができます。
就労することができない在留資格
(5種類)
原則として、日本で就労することができません。
上記以外の在留資格
(1種類)
就労の可否は、法務大臣によって個別に決定されます。

在留資格の種類一覧表

制限付きで就労が認められる在留資格

制限付きで就労が認められる在留資格を持つ外国人は、「在留資格で認められている活動(業務)」のみ行うことができます。

持っている在留資格では認められていない活動(業務)を行って、賃金や給与などの報酬を受け取った場合、外国人本人も外国人を就労させた雇用主も厳しい罰則が課せられます。

最も活用されている在留資格

最も活用されている在留資格は以下の7種類です。企業のほとんどの業務が7種類のいずれかに該当しますので、まずはこの7種類の在留資格から確認してみましょう。

在留資格の種類 認められている活動の例 在留期間
外交 外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等及びその家族としての活動 外交活動の期間
公用 外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等及びその家族としての活動 5年、3年、1年、3月、30日又は15日
教授 大学や高等専門学校などの、学長、所長、校長、教授、准教授、講師、助手等としての活動 5年、3年、1年又は3月
芸術 作曲家、画家、彫刻家、工芸家、著述家、写真家等や音楽、美術、文学、演劇、映画の指導者としての活動 5年、3年、1年又は3月
宗教 外国の宗教団体から派遣される神官、僧侶、司祭、司教、宣教師、伝道師、牧師、神父等としての活動 5年、3年、1年又は3月
報道 外国の報道機関の記者、カメラマン、編集者、アナウンサー等としての活動 5年、3年、1年又は3月
在留資格の種類 認められている活動の例 在留期間
高度専門職1号 学歴・職歴・年収等の項目毎にポイントを付け、その合計が一定点数以上に達した外国人が行う、
高度な学術研究活動、高度な専門技術を要する活動、高度な経営・管理活動
 5年
高度専門職2号 「高度専門職1号」又は高度外国人材としての「特定活動」の在留資格をもって一定期間在留した外国人が行う、
高度な学術研究活動、高度な専門技術を要する活動、高度な経営・管理活動
無期限
経営・管理 企業などの取締役・監査役・理事・監事・部長・工場長・支店長等としての活動 5年、3年、1年、4月又は3月
法律・会計業務 弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士・社労士等としての活動 5年、3年、1年又は3月
医療 医師・歯科医師・薬剤師・看護師・放射線技師・理学療法士等としての活動 5年、3年、1年又は3月
研究 政府関係機関や企業など、試験・調査・研究を目的とする機関における研究者としての活動 5年、3年、1年又は3月
在留資格の種類 認められている活動の例 在留期間
教育 小学校・中学校・高校などの語学教師としての活動 5年、3年、1年又は3月
技術・人文知識・国際業務 理系技術者・エンジニア・事務系総合職・オフィスワーカー・通訳・語学指導者・海外取引業務等に
従事するものとしての活動
5年、3年、1年又は3月
企業内転勤 在留資格「技術・人文知識・国際業務」で認められている活動を行う、
外国の事業所からの転勤者、出向者としての活動
5年、3年、1年又は3月
介護 介護福祉士としての活動 5年、3年、1年又は3月
興行 俳優・歌手・ダンサー・プロスポーツ選手等としての活動  3年、1年、6月、3月又は15日
技能 外国料理の調理師・スポーツ指導者・航空機のパイロット・貴金属の加工職人等としての活動 5年、3年、1年又は3月
在留資格の種類 認められている活動の例 在留期間
特定技能1号 特定の産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する業務に従事する活動  1年、6月又は4月
特定技能2号 特定の産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 3年、1年又は6月
技能実習1号 母国において、習得することが困難な技能等を習得し、
習得した技能等を母国に移転する外国人としての活動
法務大臣が個々に指定する期間(通算1年まで)
技能実習2号 特定の職種・作業において、母国で習熟することが困難な技能等を習熟し、習熟した技能等を
母国に移転する外国人としての活動
法務大臣が個々に指定する期間(通算2年まで)
技能実習3号 特定の職種・作業において、母国で熟達することが困難な技能等を熟達し、熟達した技能等を
母国に移転する外国人としての活動
法務大臣が個々に指定する期間(通算2年まで)

※表に記載されている「認められている活動の例」は、あくまで一例です。該当するものがない場合でも、在留資格を取得できる可能性は十分にあります。

制限なく就労が認められる在留資格

制限なく就労が認められる在留資格は、日本人の配偶者である外国人や日本人と同等以上の義務(納税義務、勤労義務など)を10年以上果たしてきた外国人などが持てる資格です。

このような外国人たちは特に保護の必要性が高いため、従事できる業務に制限がありません。したがって、従事する業務がどのようなものであっても問題ありません。

外国人の行う業務が、上記の在留資格に該当しない場合は、制限なく就労が認められる在留資格を有する外国人の雇用を検討してみましょう。

在留資格の種類 認められている活動 在留期間
永住者 法務大臣が永住を認める者としての活動 無期限
日本人の配偶者等 日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者としての活動 5年、3年、1年又は6月
永住者の配偶者等 永住者等の配偶者又は永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者としての活動 5年、3年、1年又は6月
定住者 日系人やその家族など、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者としての活動 5年、3年、1年、6月又は法務大臣が個々に指定する期間

就労することができない在留資格

就労することができない在留資格を持つ外国人は、原則として就労することを認められていません。

しかし、出入国在留管理局から「資格外活動許可」を受けることができれば、週に28時間(留学生で、学校が長期休業期間の場合は一日8時間まで)を上限として就労することができます。

また、資格外活動許可を受けた外国人は、風俗営業以外・・の業務であれば、上記と同様に従事できる業務に制限がありません。

外国人の行う業務が、上記の在留資格に該当しないときは、就労することができない在留資格を持つ外国人に資格外活動許可を取得してもらった上で、アルバイト雇用・パート雇用することを検討してみましょう。

在留資格の種類 認められている活動 在留期間
文化活動 日本文化の研究者等としての活動 3年、1年、6月又は3月
短期滞在 観光客、会議参加者等としての活動 90日若しくは30日又は15日以内の日を単位とする期間
留学 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒としての活動 4年3月、4年、3年3月、3年、2年3月、2年、1 年3月、1年、6月又は3月
研修 研修生としての活動 1年、6月又は3月
家族滞在 在留外国人が扶養する配偶者・子としての活動 5年、4年3月、4年、3年3月、3年、2年3月、2年、1年 3月、1年、6月又は3月

上記以外の在留資格

在留資格「特定活動」は、~のいずれにも当てはまらない在留資格です。

在留資格「特定活動」を持つ外国人は、法務大臣が個々に指定した活動のみを日本で行うことができます。

したがって、法務大臣が個々に指定した活動(業務)を行うことによって賃金や給与を受け取ることができる場合もあれば、資格外活動許可を得なければ賃金や給与を受け取れない場合もあります。

特定活動には非常に多くのケースがあるので、「特定活動を取得したい」・「特定活動を持っている外国人を雇用したい」という場合は、行政書士等の専門家に相談することをおすすめします。

在留資格の種類 認められている活動の例 在留期間
特定活動 外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー、インターンシップ、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者等 5年、3年、1年、6月、3月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

まとめ

いかがだったでしょうか?

在留資格を取得できなければ、外国人は日本で生活することができず、仕事も家族も友人も同僚も全て失ってしまいます。それゆえ、外国人からは「在留資格は命の次に大事なもの」と言われています。

また、在留資格が取得できなかった場合には、雇用主にもリスクがあります。例えば、解雇に伴う労働紛争リスクや採用活動にかかった時間・労力・資金が無駄になるリスクです。

外国人を雇用するのなら、在留資格に対する正確な知識を持ち、お互いにメリットを享受し合える関係を築くことが重要になります。